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岐阜地方裁判所 昭和43年(む)406号 決定 1968年11月29日

被疑者 熊川靖夫

決  定 <被疑者氏名略>

右の者に対する強姦致傷、不法監禁被疑事件について、昭和四三年一一月二六日岐阜地方裁判所裁判官がなした勾留に関する裁判のうち、勾留場所を岐阜拘置支所とする部分に対して、岐阜地方検察庁検察官から適法な準抗告の申立(「裁判の変更の請求」とあるは準抗告申立の趣旨と解す)があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件準抗告を棄却する。

理由

本件準抗告の趣旨と理由は別紙「裁判の変更請求書」記載のとおりである。

よつて案ずるに、検察官の主張は要するに被疑者を岐阜拘置支店に勾留することによる捜査の不便をいうに帰着するところ、右主張は本来被疑者の逃亡と証拠隠滅を防ぐにある勾留の目的に副うものでないのみならず、岐阜拘置支所と関警察署間の距離は約二〇キロメートルに過ぎず、岐阜拘置支所に勾留される一事によつて捜査が事実上不可能になるとかあるいは著しく困難になるものとは到底考えられないし、かりに所論の如く被疑者を犯行現場へ同行し、強姦致傷の犯行現場を確定する必要があつたとしても連日その必要のあるはずもなく、不法監禁の犯行は岐阜市徹明町から始まつていること、被害者の住所も岐阜市であること等を併せ考えると勾留期間中関警察署留置場に引続き勾留する必要性もそれほどないものと考えられ、この程度の捜査上の多少の不便は当然甘受してしかるべきであろう。しかして、一件記録および当裁判所の調査によれば、現在岐阜拘置支所においては過剰拘禁、伝染病の発生等同所に勾留することを不相当とする事情は存在せず、他方被疑者の住所は愛知県尾西市であるから、関警察署留置場に勾留されることが被疑者にとつて明らかに有利であるとも認められないし、むしろ本件が否認事件であることを考えれば過度の取調を受ける可能性も考えられなくはない。そうとすれば、本件被疑者の勾留場所を岐阜拘置支所とした原裁判には何ら違法もしくは不当の点はなく、本件準抗告は理由がないから刑事訴訟法四三二条、四二六条一項後段を適用してこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 丸山武夫 川端浩 安倍晴彦)

裁判の変更請求書<省略>

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